RIZIN

今は格闘技バブルなのか?RIZINはPRIDEを超えることができるのか?かつての格闘技バブルから考える。


先日行われたRIZIN.16。生中継で那須川天心選手が奪った1度目のダウンシーンが映らないなどのトラブルがあり、大きな話題を呼びましたが、半数以上がKO決着という盛り上がった大会となりました。2018年に亡くなった神の子山本”KID”徳郁選手の姉である山本美優選手がRIZINの看板選手である浅倉カンナ選手に判定勝利をあげ、さらに山本美優選手の息子であり山本KID選手の甥でもある山本アーセン選手が見事な右肘のカウンター一閃でKO勝利をあげ、RIZNでの連敗を3に止めるなど話題性にも富んだ大会でした。

今、日本の格闘技界はRIZIN、K-1、RISEなどを中心にさらには日本へ進出し始めたシンガポールのビッグイベントであるONE Championshipなど、かつてPRIDE、K-1が全盛期だった2000年代前半の頃のような盛り上がりを見せています。さらには総合格闘技の頂点とも言えるUFCは前ライト級チャンピオンのコナー・マクレガーは2018年のスポーツ選手長者番付の4位にランクインするなど、今やアメリカにおいてスポーツとしての人気を確立しています。

そんな今は2度目の格闘技バブルの始まりということができるではないでしょうか。かつての2000年代前半のRIZINの親とも言えるPRIDE格闘技バブルから考えてみたいと思います。

かつて栄光を極めたPRIDE

2000年代前半に世界最高の総合格闘技の舞台としてお茶の間を沸かせたPRIDE。1997年に第一回大会が開催されると大きな注目を集めました。実はこのPRIDE、当初は高田延彦選手と最強の一族、グレイシー一族の大ボス、ヒクソン・グレイシーとの対戦を実現させるための大会であり、一回きりの開催の予定でした。しかし、PRIDEは大きな話題を呼び、それから定期開催されるようになっていきました。それからPRIDEはIQレスラーと呼ばれた桜庭和志選手、日本人キラーのヴァンダレイ・シウバ、60億分の1の男、エメリヤーエンコ・ヒョードル、そして今でもRIZINで観客を沸かせる五味隆典選手など数々のスターを生み出してきました。

そんなPRIDEですが2006年にフジテレビとの契約が解除されると2007年にUFCに買収され、事実上の消滅へとなりました。しかしながら、未だに格闘技ファンの心に残り続けており、PRIDEは伝説のイベントとして、その名を残し続けています。

10年以上が経過したにも関わらず、未だに格闘技ファンの心に残り続けているPRIDEですが、なぜここまで大きなイベントとなったのでしょうか。

PRIDE黄金期の日本の経済

PRIDEは1997年に旗揚げされ、2000年代前半に黄金期を迎えました。PRIDEがこれほどの絶大な人気を誇った背景について考察していきたいと思います。
日本は1986年から1991年にかけてバブル景気と言う好景気を迎えました。就職率の相当に高く、アルバイトの時給もとんでもなく高かった時代です。

そんなバブルですが1991年に崩壊すると日本経済は一気に不況に陥ります。いわゆる失われた10年と呼ばれる戦後最大の不況です。大きな不況となると人々は不安に陥ります。リストラが行われボーナスの額も減少、中にはマイホームを手放す人さえいたようです。そんな先の見えない不安、これから生きていけるのだろうかと言う大きな不安に苛まれた時代に人々の心に輝いたのがPRIDEだったのではないでしょうか。

PRIDEが常に掲げてきたストーリー

PRIDEは常に何かストーリーを掲げてきました。その始まりが打倒グレイシー一族です。

グレイシー一族は最強と呼ばれた柔術一家であり、UFCで大男を次々撃破したホイス・グレイシーは柔術という概念を総合格闘技に持ち込んだ選手と呼ばれています。

PRIDEは高田延彦選手vsヒクソン・グレイシーのために旗揚げされており、この妥当グレイシーが一つ目の大きなストーリーだったのです。この打倒グレイシーの中心人物だったのが桜庭和志選手です。桜庭選手は次に何が起こるかわからないようなトリッキーな寝技と素晴らしいパフォーマンスで強豪外国人選手を次々に撃破し一気にトップ選手に登りつめると、グレイシー一族の選手も同様に次々と撃破しPRIDEの中心選手となりました。しかし、桜庭選手の階級には絶対王者であり、日本人キラーのヴァンダレイ・シウバが君臨していました。桜庭選手はヴァンダレイ・シウバにKO負けしてしまいます。この「打倒ヴァンダレイ・シウバ」もPRIDEにおける大きなテーマの一つと言えるのではないでしょうか。
桜庭選手はこの後ヴァンダレイ・シウバに2度挑戦しますが2回とも敗北してしまいます。しかし、打倒ヴァンダレイ・シウバに挑み続ける桜庭選手の姿に心を打たれた人々は大きな勇気をもらったでしょう。

そしてヘビー級にはエメリヤーエンコ・ヒョードル、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ミルコ・クロコップのPRIDE三銃士とも言われる選手たちがいました。

アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラは卓越した柔術テクニックと打たれ強さで大男たちを次々に倒します。中でもボブ・サップ戦では頭からリングに叩きつけられ圧倒的なパワーに大苦戦しますが、諦めない姿勢、ハートの強さを見せつけ50キロ以上もの体重差を跳ね返す勝利を掴み人々に大きな感動を与えました。三銃士の一角であるミルコ・クロコップとの対戦の際にも左ハイキックでダウンを奪われるなど絶体絶命にピンチにも陥りましたが、大逆転の勝利を掴んでいます。

ミルコ・クロコップは元々K−1の選手であり、代名詞である左ハイキックで次々にKO勝利を納めてきました。2004年には打倒ヒョードルの筆頭としてヘビー級GPに参戦しましたが、ケビン・ランデルマンに大番狂わせのKO負けを喫しています。しかし、彼も諦めずに頂点を目指し続け、その後7連勝を飾ると皇帝エメリヤーエンコ・ヒョードルの元へとたどり着きます。試合は負けてしまったものの、彼の最強を目指す姿に感動した人は多いのではないでしょうか。2006年には初のタイトルを獲得した時には大きな感動を人々に与えました。

そして、皇帝エメリヤーエンコ・ヒョードルの存在そのものがPRIDEの大きなテーマでした。彼は183センチとヘビー級にしては小柄ながらも自分よりも大きな男たちを次々に倒し人々に勇気を与えました。山本KID選手もそうでしたが、体の小さな選手が体の大きな選手を次々倒す姿というものは我々日本人にとって特別な瞬間なのではないでしょうか。

PRIDEは何かのストーリーを中心に命を削って戦う男たちが作り上げる一つのドラマのようなものでした。このように男たちが生み出すドラマ、感動に人々は心を打たれ、不安を忘れて熱中することで希望を抱いたのではないでしょうか。だからこそPRIDEは特別な場であり、大きな人気を掴み、人々の心に残り続けることができたのではないでしょうか。

RIZINはPRIDEとなることができるのか

この人々に希望を与えたPRIDEの流れを汲んでいるのが、2015年に旗揚げされたRIZINです。

ここまで考えてきたPRIDEの繁栄の背景を考えると、RIZINも近いことが考えられるのではないでしょうか。

IT化により、社会はより無機質となっていきます。個人の幸せを追求し続け、なにもかも手に入り物質的な豊かさを手にした時、人間は虚無に陥ることがあります。個人の幸せの追求にはいずれ限界がきます。そしてその個人の幸せに限界がきた時にそれは社会への不満として爆発することがあるのです。

また、社会そのものにも何か見えない不安があるのではないでしょうか。税金の引き上げ、年金の支給年齢の引き上げ、連日流れる事故や事件のニュース。

RIZINには世界に挑み続ける堀口選手、20歳の若者ながら日本格闘技を背負う存在とまでなった那須川天心選手、喧嘩に明け暮れた日々からアスリートとなり、今やRIZINのエース候補筆頭となった朝倉未来選手など、多くの自分だけの物語を持った選手が存在します。このような日々にRIZINは人々に希望を与えることができるのではないでしょうか。

堀口選手は非UFCファイター最強とも言えるダリオン・コールドウェルを相手に試合を支配される苦しい展開の中、大逆転の一本勝利を収めました。朝倉未来選手はストリートからリングへと戦いを変え、成り上がる姿を見せ続けています。那須川天心選手は20歳のキックボクサーながらかつてボクシング世界最強だったフロイド・メイウェザーに挑み、勇敢に戦いました。そして五味隆典選手は限界が近い体で果敢にメルヴィン・ギラードをKOし、かつてのPRIDEを彷彿させる会場の盛り上がりを生み出しました。

こうした選手たちの姿はかつての何かに挑み続けたPRIDEの選手たちのように人々に希望を与えることができるのではないでしょうか。

RIZINにはそれだけの熱量があると感じています。ただ単に娯楽としてのスポーツを観戦するのではなく、心を震わせるような何かがあると感じます。

かつてPRIDEの選手たちが人々に希望と勇気を与えたようにRIZINも現代を生きる人々に希望と勇気を与えることができるのではないでしょうか。

日本に進出し始めたONE championshipも素晴らしい団体です。競技レベルはグングンと上がり、今や世界的なプロモーションへと成長を遂げました。しかし、希望と勇気を与えることができるのは日本で生まれて、PRIDEの幻影を見ることができるRIZINなのではないでしょうか。

RIZINが人々の心を震わせ続け、かつてのPRIDEを超えてくれることを信じています。


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